気候変動をはじめとする環境課題が、自然環境と社会構造に大きな影響をもたらし始めており、本投資法人のポートフォリオにおいても、今後、気候変動による影響を受けるリスクが高まることが予想されます。資産運用会社では「サステナビリティ方針」において、省エネルギーの推進や再生可能エネルギー活用の取り組みによる脱炭素社会への移行や、気候変動への対応等環境に配慮した取り組みを推進していくことを掲げています。気候変動を本投資法人及び資産運用会社にとってのリスクであると同時に機会と捉え、ポートフォリオの物件価値の向上や競争力強化に努めていきます。

 資産運用会社は「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を20228月に表明し、国内賛同企業による組織である「TCFDコンソーシアム」に参加しています。
 TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures、気候関連財務情報開示タスクフォース)は、G20の要請を受け、金融安定理事会(FSB)により、気候関連の情報開示及び金融機関の対応を検討する目的で設立された組織で、気候変動関連リスク及び機会に関する「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」について把握・開示することを推奨する提言を公表しています。

 資産運用会社では、「サステナビリティ方針」に基づき、サステナビリティ(気候変動への対応を含みます。以下同じです。)に関する取り組みを継続的かつ組織的に推進・協議するための体制整備の一環として、サステナビリティ推進委員会を設置しています。また、更なる社内体制の強化を目的に、20232月に「サステナビリティ基本規程」を制定し、同規程に基づいた以下の体制により、サステナビリティに関する各種施策を推進しています。

<サステナビリティ推進体制>

機関 主な役割
取締役会 サステナビリティ方針を定め、サステナビリティ最高責任者等から定期的にサステナビリティに関する取り組み状況の報告を受け、必要な意思決定を行い、サステナビリティに関する活動状況を監督する。
サステナビリティ最高責任者
(執行役員社長)
サステナビリティが経営を行う上での最重要課題であることを認識した上で適切な経営資源の配分を行う。
サステナビリティ統括責任者
(執行役員経営企画・財務・IR担当)
資産運用会社のサステナビリティに関する事項を統括し、サステナビリティ最高責任者の補佐を行う。

サステナビリティ推進委員会

サステナビリティ方針に基づき、サステナビリティに関する取り組みを継続的かつ組織的に推進するため、協議、検討及び報告を行う。

サステナビリティ推進体制についてはこちら

<PDCAサイクルに基づくサステナビリティ推進イメージ>

 資産運用会社は、気候変動が本投資法人にもたらす影響についてTCFD提言に基づき、複数シナリオ(1.5℃2℃未満シナリオと4℃シナリオ)に基づいて分析し、事業活動に影響を与える気候変動リスクと機会を特定・評価しています。

◆シナリオ分析の対象範囲
本投資法人のバリューチェーン上における資産の保有・運用部分を主な分析対象範囲とし、資産の取得・譲渡時及び資金調達に与える影響についても念頭において、シナリオ分析を実施しました。

世界観

  • 1.5℃・2℃未満シナリオの世界観
    1.5℃・2℃未満シナリオは、脱炭素社会の実現に向けた厳しい政策・規制の導入により、低炭素技術が発展、温室効果ガス排出量が削減され、世界全体の産業革命前からの気温上昇幅を一定程度抑えられることを想定しています。そのため、物理リスクは4℃シナリオと比較して低く抑えられますが、社会構造の変化により、移行リスクは高まります。

  • 4℃シナリオの世界観
    4℃シナリオは、脱炭素社会の実現に向けた政策・規制の導入が遅れ、温室効果ガス排出量を抑えることができず、世界全体の気温が産業革命前から4℃程度上昇することを想定しています。そのため、移行リスクは1.5℃2℃未満シナリオと比較して低く抑えられますが、気候変動の影響により異常気象の増加等、物理リスクは高まります。

◆気候変動に関する主なリスクと機会
資産運用会社では、本投資法人のポートフォリオに影響を及ぼす気候変動のリスクと機会を特定し、各リスクと機会の影響度が最大となるシナリオにもとづいて評価しています。移行リスク・機会については1.5℃・2℃未満シナリオに、物理リスク・機会については4℃シナリオにもとづいて、それぞれのリスク・機会、影響度を評価し、対応策を検討しています。

リスク・機会 事業への影響 影響度 対応策
2030年 2050年




政策・法規制

炭素税の導入・排出権取引制度の強化

・カーボンプライシング等による温室効果ガス排出量規制の強化により、財務的な負担が増加する。 ・再生可能エネルギー100%電力の継続的な導入
・目標の達成に向けたエネルギー使用量の計画的低減
法規制、エネルギー効率評価に関する表示制度、開示要件の強化・拡充

・情報開示要件が強化・拡充され、対応の負担が増加する。

・既存物件の環境認証取得の要請が高まり、保有物件の環境認証取得が増加し、財務的な負担が増加する。

・環境認証取得比率目標の達成に向けた計画的な認証取得

・環境認証取得物件への入替、新規取得

レトロフィット費用の増加

(温室効果ガス排出規制対応等による改修コストの増加)
・法規制の強化や顧客需要の変化への対応により、既存物件をZEB化・ZEH化するための改修費用が発生する。

ZEBZEH化対応工事の推進
・省エネルギー性の高い物件の取得

市場 エネルギー価格高騰 ・電力価格や天然ガス価格等の高騰により、エネルギーコストが上昇する。

・省エネルギー関連工事の実施によるエネルギー使用量削減
・再生可能エネルギー100%電力の継続的な導入

・創エネルギーの検討
顧客需要の変化

・環境性能の高い物件の需要が高まり、物件取得価格の高騰等、取得環境が激化する。

・環境性能が劣る保有物件の需要が減少し、競争力が低下する。

・環境認証取得比率の目標達成に向けた計画的な認証取得
・設備更新・改修等による既存保有物件のエネルギー効率向上
・物件取得時におけるESG評価基準の導入
ESG・気候変動対応の推進、開示内容の充実

・外部機関によるESG評価向上に向けた取り組み推進
評判 投資家・金融機関の評価・姿勢の変化

・投資家・金融機関のESG投融資姿勢、企業評価が変化する。
ESG・気候変動対応の遅れに伴う評価低下。

ESG評価の低下に伴い資金調達コストが増加する。
中~大

・積極的なサステナブルファイナンスの活用
ESG・気候変動対応の推進、開示内容の充実

・外部機関によるESG評価向上に向けた取り組み推進




急性 異常気象の増加

・異常気象が増加することにより、自然災害のリスクが高い物件の資産価値が減少する。
・洪水や高潮等、異常気象の被害を受けた物件の修繕費用・保険料支払額が増加する。

・洪水や高潮等、異常気象の被害を受けた物件が営業機会を失う。

・ハザードマップ等によるリスクの把握
・防水板、非常用電源の設置、BCP策定等による被災リスクの軽減

・テナントへの防災情報の提供
慢性 平均気温上昇による影響 ・異常高温により、物件の冷房コストが増加する。
・海面上昇等に対する改修費用(嵩上げ等)が発生する。

・省エネルギー関連工事の実施によるエネルギー使用量削減
・嵩上げ等、リスクに対する改修対応実施
・防水板、非常用電源の設置、BCP策定等による被災リスクの軽減
・テナントへの防災情報の提供

機会 エネルギー源 再生可能エネルギーの普及による費用減少 ・脱炭素に向けた要請の高まりに伴い、再生可能エネルギーの供給量が増大し、調達コストが減少する。
・省エネルギー・創エネルギーによりエネルギーコストが減少する。
中~大

・再生可能エネルギー100%電力の継続的な導入
・省エネルギー関連工事の実施によるエネルギー使用量削減
・創エネルギー検討

製品・サービス グリーンビルディングの需要増加 ・顧客需要の変化により、環境性能の高い物件の賃料収入・入居率が増加する。

・環境認証取得比率の目標達成に向けた計画的な認証取得
・設備更新・改修等による既存保有物件のエネルギー効率向上
・物件取得時におけるESG評価基準の導入
ESG・気候変動対応の推進、開示内容の充実

・外部機関によるESG評価向上に向けた取り組み推進
市場 ESG投資における評価向上、サステナブルファイナンスによる資金調達コストの低減

・積極的なESG、気候変動関連の取り組み実施や情報開示の拡充により、ESG評価が向上し、ステークホルダーの選好性が向上する。

・サステナブルファイナンスの活用により、投資家・金融機関層の拡大を通じた資金調達基盤の拡大、資金調達コストの低減が期待できる。
中~大 ・積極的なサステナブルファイナンスの活用
ESG・気候変動対応の推進、開示内容の充実
・外部機関によるESG評価向上に向けた取り組み推進
レジリ
エンス
レジリエンスの高い物件の評価向上 ・災害へのレジリエンスが高い物件の競争優位性が評価され、賃料収入・入居率が増加する。 ・ハザードマップ等によるリスクの把握
・防水板、非常用電源の設置、BCP策定等による被災リスクの軽減
・テナントへの防災情報の提供
・レジリエンス向上に向けた対応の推進、開示内容の充実

◆分析結果と今後の対応
今回のシナリオ分析の結果を踏まえ、環境負荷低減、災害へのレジリエンス強化に寄与する取り組みの推進を継続・強化するとともに、シナリオ分析の精緻化や対応策の見直しを通じてリスクの低減と機会の最大化に努め、事業のレジリエンスをさらに強化してまいります。

◆リスクの特定・評価
気候変動がもたらすリスクと機会、ポートフォリオへの影響度及び発生可能性については、以下のプロセスで特定・評価をしています。

<リスクの特定・評価プロセス>

◆リスクの管理・全社リスクマネジメントプロセスへの統合
特定・評価した気候変動リスク・機会の内容及び対応策を年に1回見直し、サステナビリティ推進委員会にて報告・協議を行います。また、その内容は全社リスクマネジメントプロセスに統合し、「リスクマネジメント基本方針」及び「リスクマネジメント規程」に基づくリスクマネジメントサイクル内で管理します。

<リスクの管理プロセス>

 

 資産運用会社は、気候変動によるリスクの軽減及び中長期的な資産価値の向上を目的に、本投資法人の資産運用に際し、以下の目標を設定し、取り組みの実行およびモニタリングの実施による環境パフォーマンスの改善を図っています。

温室効果ガス排出量

  • 設定目標

*削減目標はScope1、2、3(Scope1は共用部分における都市ガスの使用量、Scope2は共用部分における電気、温冷水、蒸気の使用量、Scope3は専用部分およびテナント直契約分の電気、温冷水、都市ガスの使用量)を対象とします。
*共有又は区分所有物件については持分換算を行います。

環境パフォーマンスデータ(温室効果ガス排出量の状況)についてはこちら

グリーンビルディング

  • 設定目標

環境認証の取得状況についてはこちら